研究の概要

本研究は「電子診療録直結型肥満症データベース研究(Japan Obesity Research Based on electronIc healTh record:J-ORBIT)」といい、電子カルテ情報から肥満症診療のデータベースを構築することを目的としています。

近年増え続けている肥満症患者のデータベースを構築し、肥満症の合併症、治療実態を把握し、「どの程度の肥満でどのような合併症が出るのか」「どの程度減量すると合併症は改善するのか」「どのような治療が最も効果があるのか」などを調べることで、今後の日本の肥満症治療の質を高める方法を分析していきます。

既に糖尿病診療ではJ-DREAMSという大規模データベース事業が展開されていますが、同様のシステムを用いて、全国の病院に参加を呼びかけ、肥満症に関する大規模データベースの構築を目指します。

電子カルテに「肥満症標準診療テンプレート」と呼ばれる入力画面を作ることで、参加している全ての病院のデータのフォーマットを統一します。そして、この情報を匿名化した後に、国立研究開発法人国立国際医療研究センター内に設置するJ-ORBITデータセンターに収集することで、肥満症患者のデータベースを構築することができます。

情報公開文書

■患者さんへ

研究の重要性

本邦において20歳以上の肥満者(BMI 25㎏/m2以上)の割合は、男性31.3%、女性20.6%(平成28年「国民健康・栄養調査」) に達し、特に男性の肥満者数は過去50年間で倍増しています。肥満は糖尿病や脂質異常症をはじめとする代謝性疾患のみならず、睡眠時無呼吸、骨・関節疾患、月経異常といったさまざまな健康障害を引き起こします。

日本肥満学会は、2000年に肥満の判定基準を発表するとともに、治療の対象となる肥満を明確にするため「肥満に起因ないし関連して発症する健康障害を合併するか、その合併が予測される状態」を「肥満症」と定義しました。肥満の中から医学的に減量の必要な病態を区別し、医療の対象とすべき群を明確に抽出することは、医療資源の効果的な活用につながり、疾患の発症や重症化の予防・健康増進を通じた健康寿命の延長という、我が国の医療が目指す目標に大きく資すると考えられます。

肥満症の治療は、食事療法、運動療法による減量が重要ですが、近年肥満症の治療薬も開発されつつあり、また減量のための外科手術も急速に普及しつつあります。

一方で肥満症患者の診療実態についての情報は不足しています。肥満症の治療をより適切に実践していくために、大規模なデータベースを用いて患者情報を集積し分析していくことが、将来の日本の肥満症治療にとって重要です。

システムの概要

SS-MIX2と呼ばれる厚生労働省により作成・整備された電子診療録情報ストレージシステムが、大学病院をはじめとした全国の主要な病院の電子診療録システムに既に導入されています。

SS-MIX2を用いることで、病院ごとの異なる電子カルテベンダーであっても同じ形式でデータを収集することができます。
参加施設においては、「肥満症診療テンプレート」と呼ばれる入力画面を電子カルテに導入し、各医師が肥満症患者を診察する際に診療録の一部として入力します。
入力されたデータは個人情報を匿名化した上で、効率的に電子データとしてデータベースに蓄積されます。